山の古別荘のDIY記

どこへ続くの? その2

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 常に傍らに見えていた小川の流れは、進むにつれ次第に細くなり流れる音が消えてきて、地面の中へ消えていった。







 増水時に流れた水が描いたと思われる一筋の線を目で辿っていくと、その先には、








 橋!?




 落ち葉に隠れていてわかりにくいが、1mぐらいの幅の構造物が水の無い小川の線を確かに跨いでいます。
 構造物の先端は崩落しているように見え、その先は山の斜面に向かっていますが道のような物は存在しません。


 何だろうと思って向こう側から見るために盛り上がった地形に近づくと。







 あ、石垣!




 落ち葉の下に石組みが顔を覗かせています。

 整然と積まれた石の表には、鉄線で組まれた目の粗い網のような物が被さっています。


 幅1mほどの段を越えて向こう側を見下ろした時、それは人間が作った構造物ということがわかりました。






 高さ50センチほどの石垣が一段。
 その下にもう少し低くもう一段。
 谷底の幅いっぱいに二段で組まれた石組みです。







 二段とも同じ大きさの石によって構成されていて、いずれも金網が上に被さって固定されています。


 橋のようになっている場所を覗き込んでみます。







 崩落しているように見えましたが、よく見ると金網が中途で終わっているので、こういう作りなのだとわかりました。
 おそらく、水路をこの場所だけ開けておいたのでしょう。







 金網は錆びていますが形ははっきりしていて、遠くない近年に作られた物と推測できます。
 また、使用されている石がゴツゴツとしていて尖っていて、河原に転がっている丸みを帯びた石とは異なります。
 明らかに他の場所からここへ持ち込まれた物。


 私が辿ってきた森の中の空間は近年に作られた「」であると確信しました。


 貯水池整備のため、小型ダンプやパワーショベルがこの森の中を往来していたのでしょう。



 この石組みの正体は?


 貯水池、谷幅いっぱいの作り、伏流となる小川。
 すぐに答えが出てきました。


 これは砂防堤。


 小川から流れてくる土砂が貯水池へ流入することを防ぐための簡単な堤防。
 作られた当初は川底からもっと高低差があったと思います。









 貯水池はあと5mほど先に緑色をして満々と水を蓄えています。







 足下に注意しながら水際に近寄ってみました。
 水の中には立ち枯れした木が幾本も沈んでいるのがうっすら見えます。


 私が水際に近づくと、羽を休めていた水鳥たちが、不意の侵入者に驚いて一斉にバタバタと飛び立ちます。
 グワッグワッと警戒の鳴き声もあげています。

 狩猟をするハンターから逃れてここに住み着いているのでしょう。
 鳥たちとは数十mと離れているのに、警戒心がすごいです。



 え~と、ここは禁猟区かな?(;゚◇゚) 



 やばいっす。

 マジ、やばいっす。


 別荘地内私有地とは言え、獲物を狙っているハンター達が入っていないとは限りません。
 禁漁区の標識なんて見たことがないです。
 狩猟解禁されていれば、許可を得て入っている場合がありますから。

 今の出で立ちは上が紺の作業服、下がモスグリーンの作業ズボン、頭は白いヘルメット。
 曇り空の冬の森では完全な保護色。
 そこに人が立ってるなんてわかんないだろう。

 数枚の写真を撮影してそそくさと水際を後にします。
 *後から調べたら鳥獣保護区でした。








 辿ってきた道の正体がだいたい掴めたところで、次にこの道がどこへ通じているのか、どこからやってきたのか辿ってみることにします。


 後ろを振り返りやってきた道を戻っていきます。







 先ほどの渡渉点を過ぎてしばらく行くと、左側の山肌がだんだんと迫ってきました。
 折れた枯れ木の向こう側は山肌に遮られてそれ以上は進めません。








 そばを流れる川を見下ろすと、石垣を組んだような跡。
 そしてその先は一筋の道が続いています。












 工事をしている時はここに簡易な橋が架かっていたのでしょう。
 鉄製の敷き板で十分に渡せる川幅です。

 工事の際に使用した人工物は終了と共に全て撤去したのだと思います。


 この場所で渡渉して元の道に戻ります。



 元の道を進み青テープの場所に戻ります。

 次に平場から緩やかに登って行く道を探索してみようと思います。







 道であるとわかっていますが、こちらは今までより遙かに藪化が進んでいます。
 小さな立ち木に阻まれて非常に歩きにくい。

 頼りになる道しるべは、開鑿した時に作られたと思われる一筋の壁。







 この壁に沿って歩いて終点を目指します。



 マチェットで小木の枝を切り払い、斜めに生えた木の下をくぐり、道を塞ぐように伸びた木をまたいで進むことしばらく。
 シダ類の草が増えてきて先が激藪。
 道の形がわからなくなってきました。








 ああ、この道はここでお終いかな。









 一番怖いのは土砂崩れとかで道が喪失していること。
 不意にそんな場所へ踏み込んだら滑落の可能性もあります。

 慎重に足下を確認しながら激しい藪をかき分けてもう少しだけ進んでみます。
 尖った枝とか、トゲのある葉っぱとかが薄手の手袋を通して刺さってきて痛いです。

 顔に当たってくるような枝はマチェットでなぎ払っていきます。


 歩きにくい数mほどの立ち木の密集地帯を抜けると、







 草が生い茂っていますが何とか平場を保っていて、獣が歩いたような細い筋がずっと続いています。

 まだ行けるかもしれない。

 ゆっくりと遮る木々をなぎ払いながら先へ進んでいきます。



 道は草が無くなってきて、たくさんの松の木が茂る地帯に突入してきました。







 道の線形がはっきりとしてきて、再び歩きやすくなってきます。








 進行方向は徐々に左へ左へとカーブを描いていて、尾根の突端部分に近づいているのがわかります。

 そして道の先を見えなくしていた藪を通過すると。









 幅が広い!!



 ちょうど尾根の先端に当たる場所。
 道はくっきりとその完全な姿を見せてくれました。








 山肌を見上げると、木立を通してご近所さんの建物の影が見えています。







 貯水池は樹木に遮られていて全く見えません。

 道は緩やかにカーブを描きまだ続いています。

 さて、その先は・・・




 続く






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