配管高圧洗浄のお話し
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今回は配管洗浄、主に排水管の高圧洗浄について記述します。
ちなみに、HowTo物ではありません。
高圧洗浄機を使用した排水管洗浄とはこういうものだという記事です。
まず最初に、配管の洗浄の
基礎知識から記述します。
「
基礎知識なんてあるのか?」とお思いの方もおられるでしょう。
排水管などを清掃しようなんて言う時は、水の流れが極端に悪くなるか、詰まってしまった時。
配管の詰まりの状態、詰まっている物によって回復させるやり方が違ってきます。
何をどのようにして詰まりを取り除くかは、ケースバイケースで状況により異なります。
例えば、キッチンや浴室で完全に詰まって
完全に水が流れない状態の排水管に高圧洗浄などしたら、水が逆流し吹き出してあふれてしまいます。
そのようなケースではまず最初に、ラバーカップ(通称:スッポン)や真空ポンプを用いたり、配管洗浄用のワイヤーなどを挿入して、詰まっている原因の物を物理的にある程度抜いてから洗浄を行います。
また、固形の異物が配管内部に入り込んだ場合、無理に押し流そうとしてワイヤーなどを突っ込んだら余計に突っかえてしまうなんてこともあります。
最悪床下や壁、造作設備を取り外して配管を交換しなければならないということもあります。
子供の玩具の破片が出てきた時もありました。
排水管の異常は状態をよく確認してから作業に取り掛かるようにしてください。
高圧洗浄機を用いての配管洗浄。 職業柄プロが行う排水管洗浄の現場によく立ち会います。
詰まった現場のお客様は高圧洗浄で
異物を『押し出して流す』と思われている方が多いです。
間違いではないのですが、配管洗浄ホースを用いた洗浄では
『引っ張り出す』、又は、
『引っかき出す』という作業が行われます。
*詳細は後述します。
業者の方の高圧洗浄現場
プロの方が使用されている道具は、一般家庭用に販売されている高圧洗浄機やホースとは異なります。
水圧も水量もホースの形状も材質も全く別物です。
もちろん価格も。
一般家庭用の道具では限界があることを知っておいてください。
排水管が詰まる原因は下記の要因が主です。
・異物の混入
・配管の汚泥の付着物
日頃からパイプクリーナーなどの薬剤を用いてこまめに掃除されている方ならば排水管詰まりは起きにくいのですが、年数を経てくると配管の壁にこびりついた汚泥などによって管の径が狭められて詰まりやすくなってきます。
この汚泥はキッチンなどでは油脂や洗剤カスなどが主。
油なんか流してない! 洗剤は市販の物で固まるはずなんかない!と思われている方も多いです。
一般家庭の使用でたった数ヶ月や数年で配管が閉塞するなんてことはほぼありえません。
日常の使用で20年30年と使用する間に、配管の壁などに徐々に徐々に汚泥が付着していって、蓄積された物が詰まりの原因となります。
トイレなどは尿石(尿の成分が固まったもの)が原因となることも多々有ります。
径が狭まった配管に何らかの異物、食品カスや溶けきれなかったペーパーなどが引っかかると配管は詰まってしまいます。
飲食店などでは爪楊枝一つトイレに流されるだけで詰まってしまうことも多々有ります。
水が流れにくくなったな、変な音がするなと言う場合は配管が細くなってきている事が多いのでご注意ください。
油脂固着の一例。 ファイバースコープによる画像。
*トイレットペーパーは水に溶けると言われていますが、紙成分が溶けているのではなく、水の中で編まれた繊維がほぐれているだけの物です。
大量に流すとほぐれが進まず詰まりやすくなります。
「トイレに流せるペーパー」は流してもいいと言うだけでトイレットペーパーほどほぐれません。
最近の節水型便器では、下水本管まで流し切ることが出来ずに配管壁に残ってしまい乾燥して固着して、それが積み重なって詰まりの原因となることが多発しています。
また、「トイレに流せる猫砂」なども同様です。
*洗剤や石鹸は水に溶けるものだという意識がありますが、水に溶け切らなかった成分などが配管の壁に付着して乾燥すると、石のように固い固まりとなります。
洗濯の際に大量の洗剤を用いるご家庭では排水管の詰まりは起きやすいことがあります。
*
近年はトリートメントなどのジェル状のヘアケア用品と髪の毛が絡まることによる浴室の排水詰まりが多いです。
一般家庭のトイレやキッチンの流しが
完全に詰まって水が流れない場合、余計に水を入れると溢れてしまいます。
高圧洗浄機など大量の水を流し込むものはほぼ使用できません。
またトイレ便器のように排水路が曲がりくねった複雑な構造では、家庭用の洗浄機のホースなどは入って行きません。
そんな場合は上述したようにラバーカップ(通称:スッポン)や真空ポンプを用いたり、便器にも使用できるタイプの配管洗浄のワイヤーなどを用います。
高圧洗浄機の役目は、排水管に固着した汚泥を除去清掃するためのものとお考えください。
高圧洗浄機を用いるのは、外せる配管を外した状態か、排水会所などを通じて配管の下流側から内部へと挿入することのほうが多いです。
市販の高圧洗浄機はノズルの先端から前方に向かって高圧水を噴射して清掃をします。
排水管の洗浄の場合、前方に向かって噴射すれば配管の中にホースが入って行かず押し戻されてしまいます。
そこで、
排水管洗浄の場合は専用のホースを使用します。
専用のホースは先端のノズルの横に噴射口があって、逆噴射で水が吐出されます。
逆噴射の高圧水の力で排水管の中を進んで行きます。
逆噴射で推進力を得るとともに、高圧水で配管内に固着した汚泥を引っかき取って突き崩しながら進んで行くわけです。
下流側から詰まった物質を高圧水で崩しながら進むので
「引っ張り出す」、
「引っかき出す」という表現を用いています。
引っかき取った付着物は排水管の下流側へと流されてくるので、室内へ流れ込むことがなく家の中を汚損することがありません。
高圧洗浄機について
一般家庭に用いられている排水管は直径が10センチから15センチ程度です。
一般家庭の排水管洗浄ならば家庭用の電動の高圧洗浄機と専用ホースで十分に洗浄できると言っても良いかと思います。(ケースによります)
マンションなどの大きな建物の排水管は直径が20センチから30センチもあるものが多く、家庭用の洗浄機では役不足。
エンジン駆動などのしっかりした機材が必要になります。
プロの方の車載タンク
排水管洗浄に重要なのは水の噴射量。
業務用の機械で配管洗浄を行う際の水圧力(吐出圧)は、家庭用機械を使用した時の水圧とあまり変わりありません。
何が異なるかと言うと、高圧を維持したまま噴出する水(吐出量)を大量に出すことが出来るということ。
外壁などの洗浄の際は、古い塗装を剥がしたりする必要があるので、噴出の圧力が高いものを求めますが、配管洗浄の場合は掻き落とした汚泥などを配管出口まで運び出さなければいけないので、高い吐出量が必要なのです。
また、圧ばっかり高めると配管が破損してしまいます。
道路の下に埋まっている下水本管などを清掃する洗浄機はとんでもない高圧が出ますが、そんな物を家庭で使ったら管に穴が空いてしまいます。
業者の方が用いる洗浄機は大量の水を噴射できるような仕様となっています。
一般家庭の物は水の供給は水道管からの流量ですが、業者が使用している物は一度タンクに貯めてそこから一気に使用していきます。
消防車などのポンプ車のような物とお考えになれば理解できると思います。
タンクの向こう側がエンジン高圧洗浄機
また、機械の耐久性は全く異なります。
業務用の機械はたいへん高価です。
洗浄用ホースについて
一般家庭用の機械に取り付けられる洗浄ホースは、水圧の損失を防ぐために硬い素材のホースが使われています。
一般家庭用の洗浄ホース
柔軟性が無く、巻き癖がつきやすく、あまり曲がりません。
これは、ケルヒャーもリョービもマキタもほぼ同じ材質の物を販売しています。
一方、業者が使われるホースはステンレスメッシュ製とか柔軟性の高いウレタン製のしなやかなホース。
プロが用いるステンレスワイヤー製の洗浄ホース
配管に屈曲部、エルボなど90度に曲がる箇所があると、家庭用のホースは曲がらずに突っかえてしまって進んで行きません。
ワイヤーホースはしなやかなのでそんな場所でも曲がって進んでいきます。
なぜ家庭用にそれを用いないかと言うと
価格。
家庭用が数千円に対して、業務用は2-3万円以上もします。
一番特筆すべきは
『ホースを回す』という作業。
ホース先端金具から水は3方向、又は4方向から噴射されています。
汚泥は配管の円周全部にこびりついているわけですから、先端を回転させながら除去しないといけないわけです。
更に、配管には段差や継ぎ目、細くなったり会所があったりします。
それを先端を回転させて乗り越えていきます。
10mも先に伸びたホースの先端を、手元で操るだけで回転させスライドさせていく。
このホースを回すという作業が業者の方のテクニックの一つなんです。
目視出来ない世界を経験でこなしていきます。
素人の私には出来ません。(;´Д`)ノ
家庭用ホースは固くてしなやかでないので手元での操作はほぼ出来ない、やりにくいのです。
参考動画:
先端ノズルについて 洗浄ホースの先端に取り付けられている先端金具は様々な種類があります。
家庭用はホースに固定式が主です。
一般的に「
ロケットノズル」と呼ばれています。
ノズルには高圧水の噴射口が3-4箇所空いており、斜め後方に噴射する仕組みになっています。
スプリングが取り付けられてあるものは、配管の曲がり角でスムーズに導入する意図で作られているようですが、ホースが固いので殆ど意味はないものと思います。
業務用はこの先端ノズルが脱着交換できるホースもあり、ノズル形状も様々。
噴射しながら回転するものや、直進方向と逆噴射と両方出る物、6穴8穴なんていうのもあります。
曲折した配管をスムーズに進行できるように作られたのが「
スズランノズル」。
曲折の多い配管でも入っていくことができるようです。
スズランノズル
参考動画:
このスズランノズルですが、下へと伸びる縦配管で曲がり角の多いパイプの洗浄に優れた性能を有します。
ロケットノズルでは入らないような直角の曲がり角でも、スムーズに侵入できるのは、上の動画をご覧になればおわかりになるはずです。
便利なスズランノズルですが一つだけデメリットがあります。
それは、先端に重量があるため下に垂れ下がり、大きな段差があるとそこで突っかえてしまうということ。
動画では細い配管を用いているのでスムーズに進行していますが、太くて直線的な地下配管などではあまり使用されません。
プロの業者の方にスズランノズルのことを聞いてみました。
一般家庭のキッチンや浴室のように曲がり角が多くて細い配管はスズランノズルが便利だが、飲食店などの太い配管にはロケットノズルを使用しますとのこと。
もし、配管に亀裂や配管ズレなどがあった場合、その割れ目にスズラン部分が落ちて嵌ってしまい取れなくなる。
古い建物や地震などで被害があった地下配管などにはスズランノズルは用いない方が良い。
とのことでした。
閑話休題
2018年6月に大阪北部を襲った大阪府北部地震は大阪の建物に大きな被害を及ぼしました。
屋根瓦の落下など建物の損壊がひどかったのをご記憶の方も多いと思います。
メディアなどで報道されていませんが、大阪市内でも地下に埋設された配管類の被害が多発しています。
目に見えない場所のため、気が付いたのが数カ月後、1年も経過してからという物が多く、現在でもその補修に頭を悩ませている建物オーナーさんが多く存在します。
現在(2020年2月)でも、修理業者は手一杯で見積もりすら行える状況ではありません。
当方が管理する建物でも、地下排水管の会所枡にクラックが入ったようで、それに気が付いたのが地震から約半年後。
配管内部に土砂が入り込み数度の配管詰まりを起こして対処に追われています。
配管の上には飲食店店舗があり、営業を休ませて店舗内装を取り除いてからでしか工事ができない環境です。
地下配管の修理は工事費がとても高く付きますし、店舗などが上にあると休業補償や店舗内装の費用まで加わるので、簡単に工事出来るというものではありません。
店舗内部の配管を諦めて閉鎖し、玄関ロビー下を掘ったり、建物裏側から外周を掘って配管を表に出してくるとか、別ルートを構築するなどの工夫が必要な工事になります。
昨年末に「次のGWかお盆の長期休みに仕事できないもんだろうか。概算費用出してみて。」なんて安易に考えて申し出たら、業者側から「とんでもない!工事どころか現場に見に来ることさえままならない状況です!」と言われ驚きました。
配管が詰まった場合、詰まった物を全て除去するのがセオリーですが、配管割れやズレ、会所桝の破損の場合は高圧洗浄をやりすぎると、配管周囲のガラ(砕石や砂)を全部掻き出してしまって、どんどん落ち込んで行き収集がつかなくなる可能性があります。
現時点では洗浄で配管内の詰まり物を軽く取り除くだけ、と騙し騙し維持しています。

地震により会所枡が破損して下半分が落下している会所枡。
亀裂部よりガラが入り込み詰まりを起こす。
阪神淡路大震災の影響による損害の画像です。
一昨年から昨年末にかけて何度か洗浄の業者を呼んで掃除してもらっていますが、かかった費用は数十万円。
これだったら、業務用の排管洗浄機一式買えるじゃないか!(;´Д`)ノ という事態。
本格的なエンジンタイプの洗浄機なんか買いませんが、電動で業務用の高圧洗浄機を購入する計画を立てております。
*地震保険は建物の上の部分は、すぐに目に見えるので簡単に補償申請出来ますが、地下の部分は目に見えるものではなく、しかも、時間が経過しているため、地震との因果関係を証明することが難しく、申請してもほぼ受け付けてくれません。
排水管清掃業について
排水管の洗浄を業者に依頼すると、一般家庭の排水管詰まり清掃1箇所の費用が約2万円前後(税別)。
業務用排管の場合は1箇所約4万円前後(税別)ぐらいします。
これが複数箇所や複雑な業務、ファイバースコープ挿入となるとオプション料金として更に費用が加算されていきます。
一般家庭で排水管洗浄を行うのにはちょっとお財布には優しくない値段ですが、
この費用、決して高いとは思いません。
一式数十万円から数百万円する消耗の激しい機材、それらを運ぶ車。
ガラや残土、下水管に流すことの出来ない汚物の処理費用。
人件費、維持費だけでなく。
作業員は、異臭のする排水口に手を突っ込み、汚物で汚れたホースを操作し、マンホールに顔を突っ込むこともあり、時には汚水を頭からかぶることさえも往々にしてあります。
変な病原菌や昨今のウイルスに感染する恐れも十分にあります。
人の嫌がる仕事を黙々とこなされる作業員の方に頭が下がる思いがすることがあります。
この職業の方々がおられるおかげで、マンションなどの共同住宅などが平穏に維持されているのだと、ご記憶していただければありがたいです。