山の古別荘のDIY記

リゾート地の現状

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 昭和60年代前半から平成にかけて、バブルの波に乗り建てられた中古別荘が安価で分譲されているのです。
 その別荘は、急傾斜の山肌にあったり、丘の中腹に建てられていたり。
 建てるのにたいへん工夫が必要だっただろうなという立地に点在していました。
 そして、元の所有者に見捨てられ、長い時間をかけて自然の中に溶け込もうとしている建築の数々でした。



 この物件へ辿る階段は落ち葉や枯れ草で覆われていて段差が見えない。
 おそらく何年も人が手入れしていないことを物語っている。




 苔むしてまるで熊野古道の石段のような趣が出ている階段。


 住宅を購入する上で一番重要なのは建物の基礎。
 基礎さえしっかりしていれば、上は補修さえすれば何とかなるものです。
 よく、木造は30年、コンクリートは50年と言われていますが、数百年経過した古民家が今でも使われたりしているのを見ると、古い木造の方がメンテさえ怠らなければ長持ちするものです。(石造り・レンが造りはもっと長い)

 1軒1軒必ず基礎部をチェックしていきます。




 この物件は一番安い物件だったが、基礎の鋼材に錆が。
 サビ取りと再塗装で足場を組まなければならず、補修に想像以上の費用がかかりそうなのでパス。




 鉛丹塗装(サビ止めのオレンジ色の塗装、鉄骨によく用いられる)が浸食されてサビがかなり浮いています。 
 こうなるとやっかい。




 ベランダ(バルコニー)の木材がすっかり朽ち果てていて、手すりは崩壊している。
 床を踏み割れば地面は数m下。 
 「ベランダに出たらまずいですよね?」 (・ω・;)
 「たぶん、下に落ちます。」f(^ー^;
 担当者さんとの会話。

 
 
 数軒回った時点で、自分の浅はかさに気付き始めました。
 「安い物件は安いなりの物」ということ。
 雨露さえしのげればいい、とか、いざという時の物だから、なんていう考えではダメなんだと。
 安価な物件を購入しても、状態が悪ければ補修やメンテに莫大な費用がかかってしまい結局、安物買いの銭失いになってしまいます。

 私の本業は建物の管理業。
 どこをどう直せばどれぐらいの費用がかかるかは、概算ですぐに思い浮かびます。
 電気や水道、ペンキ塗りや大工仕事ならばたいていのことは出来るが、足場を組んでの高所作業となると全く別。
 とてもじゃないが一人では出来ない。

 考えを根底から改めなければいけないと気付いたのです。



 どの物件も同じ光景が見られたのですが、室内はきれいですぐさま使えそうでした。
 まるで、数時間前までこの家の人が在室していたかのようなたたずまい。
 家具はそっくりそのまますぐに使えます。



 私が購入した物件を紹介されたとき、
 「ここのオーナーさんは、ご主人が数年前に亡くなったと聞いています。 今は年老いた奥さんの名義になっています。」
 案内してくれた管理会社の若い担当者が語ってくれました。




 机にホコリはかぶっているが、数日前までだれかが住んでいたかのよう。
 壁に貼ってあるカレンダーは1995年の物だった。


 当時、私たちと同世代であったろうアウトドア好きのお金持ちのオーナーが、趣味と金に飽かして別荘を建築した。
 おそらく数千万円から1億円ぐらいかけて。
 
 そして年月が経ち、そのオーナーが年老いて来れなくなったり、他界したりしてそのまま手入れもされずに、時間が止まったままこの地に存在しているのです。


 今、私がこういう別荘を購入するとして、年老いたり死んだりしたら来れなくなるでしょう。
 息子や娘がこういう別荘に興味を持ち、メンテをし続けて住んでくれるならばいつまでも続くでしょう。

 そうでなければ数十年後に、引き継いだ者達の手で、再び更に安い価格で売りに出されるのです。
 建物が朽ち果てて誰も住めなくなるまで。


 ここに、別荘という物の最期を見たような気がしました。





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