趣味の沼の回顧録

銘玉と呼ばれるレンズ

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 レンズ交換式カメラのレンズはピンからキリまであって、価格も新品で1万円ぐらいから果ては100万円オーバーまで様々な物があります。

 単焦点レンズですと、使用したい画角によってレンズを使い分けますから、購入する側も1個だけではない。
 各焦点距離のレンズを揃えると、28ミリ、35ミリ、50ミリ、85ミリ、135ミリ、200ミリ、300ミリという具合に数が増えてくる。
 安価なレンズでもこれらを定価で購入すると、総額は30万円ぐらいになってしまいます。
 これは35ミリフィルムサイズのレンズで、APS-Cのデジカメならこれに広角域の24ミリだの15ミリだのが加わってきます。




 とある場所で見かけた女性カメラマン。
 一般人を無断で撮影するのは法的に問題があり、重大なマナー違反だが、あまりにも気になったので1枚撮ってしまった写真。
 反省。m(_ _)mペコ ちなみに美人さんでした。(*^^*)

 彼女が使用していたカメラはミラーレスのオリンパスペンと思われる。
 驚いたのは肩から下げているカメラバックの巨大さ。( ̄▽ ̄;)
 入念にレンズ交換をしながら写真撮影をしていたが、彼女もレンズ沼の住人なのだろうか?




 鉄道撮り屋さんや、鳥撮り屋さんなどは、超望遠レンズの500ミリや600ミリという、バズーカ砲の砲身のようなレンズを欲しがります。
 カメラレンズは焦点距離が伸びれば伸びるほど暗くなるという特性があって、あまり暗いとブレが生じやすいなど使い勝手が悪い。
 で、メーカーも高性能な明るいレンズを作るわけですが、これが1本80万円だとか100万円だとか途方もない値段で売ってます。
 買うヤツも多くいるんだよ、コレガ。(;^_^A

 こういう物ばかりを見つめ続けているレンズ沼の住人は、金銭感覚が麻痺していて10万円や20万円のレンズを普通だと思うようになってくる。

 そんなレンズの中でも、特に秀逸な画像を写し出してくれるレンズは「銘玉」と呼ばれています。








 きれいな写真が撮りたい!

 一眼レフという少し高価なカメラを所有すると、誰しもが一度はこう思います。

 この感情が芽生え始めると、雑誌やネットなどで撮影が上手な人の作例を参考として見るようになってきます。

 どうやったらこんなきれいな写真が撮れるのだろう?
 何を工夫したらこんなに素敵に撮影出来るのだろう?


 そういう疑問が同時に沸いてきて、撮影データまできちんと読んで使用機材に何を使っているか知ろうとします。
 そして、作例写真などに使われているレンズは、たいていはこの銘玉と呼ばれる高級レンズ。

 撒き餌レンズなどを一度使ったことがある人は、良いレンズは良い写真を生み出すのだという先入観念が頭の中にこびりついています。

 レンズ沼ウィルスが体内を駆け巡り脳内に定着し浸食し始めました。
 レンズ沼ウィルスに感染した人間が、決まって最初に出会うところが銘玉を使って撮影したいという欲望


 初期症状:レンズ欲しい欲しい症候群


 そう、ここでカメラメーカーの罠にはまり、レンズ沼ウィルスの初期症状が出始めるのです。




 SONY DSLR-A550 MINOLTAαAF28mm F2



 しかし、銘玉と呼ばれるレンズは、メーカー側においても渾身の技術をつぎ込んで製作された物だけあって非常に高価。
 普通に1個10万円から20万円はします。


 何も買う物がないはずなのに、お金も持っていないのに、カメラ店へと足が向かいます。

 カメラ店の陳列棚の一番いい場所に鎮座して、後光が輝いている高級レンズを羨望のまなざしで見ます。

 レンズの手前に置かれた値札の金額を見てため息が出ます。

 安い物でも約10万円前後。




 普通のサラリーマンなら給料の半分ぐらい飛んで行ってしまいます。
 給料全額使える独身でさえ、この金額は痛いです。

 「どうしようか?ローンでも組もうか? いや、こんなの買ったのを嫁さんに見つかったら殺されるな。」

 という思いがよぎり、渋々その場を離れます。




 PENTAX K10D smc PENTAX F★300mm F4.5 ED




 それ以後、意味もないのにカメラ店の陳列を見つめため息をついて変えることを繰り返すようになります。


 そして、ある時ふと思いつきます。

 そうだ!中古品を物色すればいいんだ!!(゚∀゚)アヒャ♪



 ところが、こういいう銘玉レンズは中古品でも人気があるので、半値になるようなことが無く、中古専門店では7がけとか8がけとかあまり割引がなされていない価格で陳列されています。
 とてもじゃないけど、まだまだ購入できるような代物ではない。
 再び中古店からため息をついて出てきます。





 そしてある時、見つけます。

 決算セールとかで、定価10万円の銘玉レンズが、中古で普段は7万円で売られていたのが、5万円で売られているのを。


 安いじゃないかっ!!!!(゚∀゚)


 この機会を逃したら、こんな価格では二度と手に入らないかもしれない。

 焦ります。




 PENTAX *istD smc PENTAX FA★24mm F2 AL




 どこかのカメラオタがこの商品を見付けはしないだろうか。
 先に買われてしまうんじゃないか。


 店員に買うからキープしてくれと告げ。
 あわてて銀行ATMへと走り、なけなしのお金を引き出します。

 もう嫁さんの恐怖とか、生活への心配とか、そんな物はどこかへ消え失せてしまっています。




 日常、家族でファミレス行って、子供が「1500円のステーキランチ食べたい!」って言ってるのに、「高いから1200円のハンバーグランチにしなさい!」って言ってるおっさんがですよ。
 カメラレンズなら5万円をぽんと出す。

 しばらくの間カメラ店で高い金額を見続けたことで、彼の金銭感覚は徐々に奪われていったのです。



 自宅にこっそりと持ち帰り、誰にもばれずにこっそりと自分専用の物入れに隠します。

 深夜、自分の時間が出来て購入したレンズを手に取ってニヤニヤ眺めます。

 試しに、UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみなどを置いてテスト撮影してみます。

 写し出された写真の描写に満足してうんと頷きます。


 この瞬間の幸福感。 あの幸せなひととき。






*Nikkor 35mm F1.4
 私の友人が某大手新聞社の外郭団体に勤めていて、今では本部長という肩書きにまで昇進した。(年功序列?f(^ー^;)
 彼自身は本当はフリーカメラマンで身を立てたかったのだけど、若くして結婚して子供が出来て、生活に追われるようになったのでそのまま会社に居着いてしまった。
 そう言う彼が愛用しているのが、やはりNIKON!
 と言うか、プロの記者と言えばニコンを使うのが当たり前のような時代でした。

 学生時代に、「いっしょに写真でも撮りに行こうよ。」と言うことになって二人して京都などを散策した時がありました。
 そして後日、出来上がった写真を見せて貰ったらきれいさに愕然としてしまった。
 もちろん、腕前の差が極端に違うということもあるのだけど、彼に教わりながら同じシチュエーションで同じような撮り方をした写真なのに、全く異なる絵がそこにありました。
 (私は当時ミノルタ。)
 なけなしの金をはたいて買ったニッコールの35ミリF1.4というレンズ使用したと言っていました。
 残念ながら型番を聞いていなくて覚えていませんが、AFに移行する少し前の時代のMFレンズでした。
 
 現行のニコンの35ミリレンズも評判が良いですね。
 この時代から受け継がれているのだと思います。








 次の休みの日が待ち遠しくて仕方がありません。

 このレンズをカメラに付けて歩いているだけで、他のカメラマンがおっ!と言う顔をしてくれるんじゃないか。
 カメラの知識のある若い女の子が、すれ違いざまに気付いて振り返ってくれるんじゃないか。

 そんな思いで休日がくるのを待ちます。
 そして休日に撮影に出かけます。




 PENTAX *istD smc PENTAX FA★200mm F2.8 ED



 何枚かの写真を撮影してきて、帰ってからパソコンで画像を確認します。
 写真を等倍サイズに拡大してチェックします。
 写し出された写真は明らかに今までの安物レンズとは異なります。

 1枚1枚までくっきりと映し出される木の葉。
 ピントの合っている領域から滲んでいくように自然にとろけていくボケ。
 鮮やかに再現される花の色。

 高いお金を出して高級レンズを買ったことに満足します。




 数回、高級レンズを撮影に持ち出して、満たされた購買欲、所有欲が次第に薄れてきます。

 そこでまた気付きます。


 画角が中途半端だな。(-""-;)


 当たり前だ単焦点なんだから。


 上に書いたように、単焦点レンズはそれぞれの焦点距離が販売されています。
 レンズは一つの焦点領域だけではありません。
 高級価格帯レンズは銘玉と呼ばれていなくても各焦点距離の製品がシリーズとして売られています。



 不足する画角を補うために。
 また購買欲が首をもたげてきます。


 幾つかの焦点距離のレンズと同時に、
 花をアップで撮りたい→マクロレンズ
 広い領域を撮りたい→魚眼レンズ
 ソフトにぼかしてみたい→ソフトレンズ
 と言う風に特殊レンズも欲しくなってきます。
 その中には高価格な物があり、銘玉と呼ばれるレンズがあります。

 所有欲を刺激する製品が多く存在します。




 PENTAX *istD TAMRON SP AF90mm F2.8 MACRO 1:1 (172E)



 やがて自分の撮影対象物が決まってくると、それに応じた領域のレンズを揃えていくようになります。
 普通に人物や風景を撮っているだけならあまり問題は無いのですが、鳥やら星などを撮るようになってくると・・・・。


 麻薬みたいです。(;´Д`)ノ
 いや、美術骨董の世界ほどではないのでマシなのかも。f(^ー^;






*TAMRON 90mm F2.5 MACRO 52Bと52BB
 カメラレンズ専業メーカーであるTAMRON社を一躍有名にしたのが、52B(初代)と52BB(二代目)という製品型番が与えられた焦点距離90ミリのマクロレンズ。
 ボケが非常に柔らかで、スムーズにとろけていくように背景に溶け込んでいき、えもいわれぬ優しさを表現してくれます。
 それでいて被写体の輪郭はきりっとしていて、しかも発色がすこぶる良い。
 デジタルカメラで使用してもその優しさと色乗りの良さは消えることがありません。

 既に生産終了しているので新製品で入手することは出来ませんし、中古品は愛好家達がなかなか手放しませんので状態の良い物は入手困難になっています。
 2つとも所有していますが、52BBの方は特有の絞りの粘りが出てマニュアル操作が出来ない状態で、PENTAXのアダプトールを付けてでしか操作出来ません。


 
 タムロンの90ミリマクロの性能は現行製品でも受け継がれていて、とても良いレンズです。
 現行製品はF017272Eという型番の2つのモデルがあります。(装着出来ないマウントがありますのでご注意を。)
 価格も大手メーカーの製品より遙かに安価に購入出来ますので、この焦点領域のマクロレンズを使ってみたいならば購入しておいても損はしないと思います







 私はペンタックスとミノルタユーザーですので、ニコンやキヤノン、オリンパスの銘玉と呼ばれるレンズはあまり知りません。


 ペンタックスにもミノルタにも銘玉と呼ばれるレンズがあります。

 ペンタックスは☆レンズ(スターレンズ)と呼ばれる秀逸な高級レンズ群がありまして、その中でもFA☆85mmf:1.4は秀逸と評判の高いレンズでした。
 当時これまた銘レンズとして評判の高かったニコンのAi AF 85mm f/1.4 D (IF) は、ペンタックスのこのFA☆85mmがあまりにも素晴らしいので、ニコン社がFA☆85mmを参考にして自社製品を作ったというほどの銘玉。

 FA☆85ミリの当時の発売定価は98,000円。

 カメラを始めた私にとって、とてもじゃないが、即金で購入できるようなレンズではありませんでした。


 ある時大阪にある大きなカメラ量販店の中古コーナーを見に行った時。
 陳列棚に一つだけ、このFA☆85mmがあるじゃありませんか!Σ(゜д゜;)
 価格は4万円ジャスト。


 パチッ!!


 脳内のウィルスが購買意欲のスイッチを入れてしまいました。


 すかさず店員さんに言いました。

 「こ、これ、見せてください。」(震え声)

 ずっしりとしたレンズを手に取り、レンズ内部を覗き込むと。
 僅かなホコリは入っているものの、傷もカビもクモリもなく良品。


 「こ、これ、か、か、か、買います。 お金下ろしてくるのでキープ出来ますか?」

 お店の了解をいただいたので、すぐに銀行へ行きます。



 ところが残高確認すると、自分の口座にお金が十分に無い。( ̄▽ ̄;)

 当時はもう既に今の会社運営に当たっていたので、



 「会社のお金借りるか。 後日給料から天引きだあ!!( ^▽^)」

  ↑完全に麻痺してしまった金銭感覚



 と、会社の口座からお金を出して購入してしまいました。 もちろん後日返してます。

 幸せでした。満足でした。(*‘ω‘ *)




 PENTAX *istD smc PENTAX FA★85mm F1.4



 さて、このFA☆85mmなのですが、すぐ後に終売を迎えます。

 ペンタックスはカメラだけでなく天体望遠鏡、医療内視鏡分野に世界でもTOPクラスの技術を持っていました。
 一部上場の企業で、会社規模の割に株価が低い(当時、1000株単位330円前後で取引されていた)


 これに目を付けたガラスメーカーのHOYA。
 2007年にペンタックスの株を買い占め、攻撃的買収するという悲劇が襲ってきました。
 会社が乗っ取られると、優良な技術だけ分割されて転売され、抜け殻はぽいっと捨てられる。
 ペンタックスには自社株を買い取って敵対買収に対抗できる資力はありません。

 ペンタックスがやばい!
 ペンタックスが潰される!


 この噂は業界にあっと言う間に広まりました。

 *実際にはPENTAXとHOYAの経営統合が進んでいたが、経営陣の意見の相違で大混乱。
 円満合併が敵対買収に切り替わって、潰れるんじゃないかと噂が噂を呼んだ。
 それは後々になってわかったこと。



 レンズの供給が止まる。
 レンズが二度と入手出来なくなる。

 ペンタックスユーザーだったカメラマン達にも噂があっと言う間に広がりました。


 ペンタックスレンズの中古市場価格はうなぎ登り。
 特に秀逸と言われていたこのFA☆85mmはほぼ新品と大差ない価格まで上がりました。




 その後、カメラ事業はHOYAでも継続される事が決まりましたが、旧製品で採算の悪い物は切り捨てられることになります。
 ペンタックスからFA☆85㎜の終売の正式発表が出ると、完全にプレミア状態。
 一時は、未使用新品ならば定価よりも高くなってしまいました。


 私はその有様を画面の外から見て、

 買っておいて良かった~ (◎_◎;)

 との思いがひとしおでした。


 ペンタックス社消滅以前に購入していたFA☆200mmf2.8、F☆300mmf4.5はいずれも高騰して遙か彼方の手の届かない値段帯までになってしまいました。




 PENTAX K10D smc PENTAX FA★85mm F1.4




 一眼レフカメラに興味を持った皆さん。
 カメラ業界は光学メーカーだけでなく弱電メーカーまで参入して乱売合戦。
 歴史有るメーカーが悲劇に見舞われ消失し、レンズの供給が止まるかもしれません。
 ミノルタ社でも同様の混乱が起きてしまいました。
 ミノルタαシリーズのレンズも高騰して、銘玉と呼ばれるレンズは入手出来なかった。

 憧れの銘玉と呼ばれる高級レンズ。
 いつか、入手出来なくなる日が来ないとも限りません。


 買うのは今かもしれませんぞ。ヒヒヒ




*smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
 PENTAXがまだペンタックス株式会社だった頃、ペンタックスのレンズ設計に平川氏という方がおられました。
 先述のFA☆85ミリF1.8も氏の設計。
 平川氏が手がけられたレンズの中に、
smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited と smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited があります。
 レンズを設計する場合、ガラスを通ってくる光線は色収差や球面収差などの阻害となる部分を無くすように作るのですが、このレンズはそう言う収差を微妙に僅かに残すことで、レンズの特性、レンズの個性として絶妙な味わいを醸し出すように作られたレンズとだと言うことです。

 APS-Cのカメラで撮影していたときにはこのレンズの良さはあまりわからなかったのですが、フルサイズで撮影した写真を見てびっくり!
 こんな描写をするレンズだったのかとあらためて感心しました。
 このレンズを使いたいがためにPENTAXのカメラをサブ機として所有しているプロの方も多いと聞いています。



 タムロン社が発売しているレンズでSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD(A02)というズームレンズが2014年から販売されています。
 作例を幾つか見ましたが、解像抜群、色乗りも描写も抜群のたいへん優れものです。
 風景に良し、星撮りに良しと現行製品では超オススメのレンズです。
 後々、銘玉と呼ばれるレンズに殿堂入りするのではないでしょうか。
 難点はでかい、重い。(;^_^A
 *PENTAXはこれをOEMで作らせて倍の値段でぼったくり販売してやがるんだぜ!(▼、▼メ)ゴルァ ちっとやそっとじゃ買えないじゃないか。( ´Д⊂ヽ

 


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