釣りは病気
★目次ページに戻る
釣りでもしよっか。(◎_◎;)
まだサラリーマン時代だった頃。
25年も前にまで遡ります。
結婚を機にそれまで完全埋没していたスキーをすっぱりとやめ、余暇を過ごす目標物をすっかりと無くしてしまったある日ふと思いつきました。
子供の頃から休日に家でじっとしていることなど出来ない性格の私は、大人になって会社勤めでハードな日々を送っている状態でもそれは直りませんでした。
天気の良い日曜日に家で転がってテレビを見ているなんて我慢がならない。
だけど、家庭持ち、低収入の私が独身時代のように、入って来た収入を右から左へと流していくような真似は出来ない。
費用がかからなくて、時間制約があまり無くて、手軽に行えるアウトドアの趣味。
真っ先に思いついたのが「釣り」でした。
釣りは道具さえ一揃いあれば、あとは餌代とお弁当ぐらい。
船とか遠出とかしなければ、海への往復の交通費と餌代、当時で約2000円ぐらいで一日遊べる。
そういう考えから始めたのでした。
皆さんも一度や二度は釣りをされたことありますよね?
「フナに始まりフナに終わる」
と称されているように、私も子供の頃に友人と友人のご両親に連れられて、郊外の野池で遊んだ記憶があります。
私の両親は仕事が忙しくて、休日に遊びに連れて行って貰えたことがなかった。
大阪湾の湾岸は埋め立てで殆どがコンクリート護岸ですが、港湾は土日になればファミリー達の好釣り場に変身します。
独身時代には仲間とバーベキューの用意をして、サビキ釣りを楽しみながらワイワイとやったのもいい思い出です。
日本の釣り人口は、バーベキューなどアウトドアで楽しんだり、休日の夕方にちょっと竿を出してみようとかする人を全て入れると約1000万人。
(2004年には1490万人だったのが2014年には770万人まで減ったとか。)
普段はしないけどやったことあるし、機会があったらやりたいなと考えている人、年に1日ぐらいかな?という潜在的な人まで入れたら3000万人に達するだろうと言われるほどです。
私のように趣味として日頃から本格的に釣りをしている人は数十万人。
国土を海に囲まれた日本人にとっては最もポピュラーなリクレーション。
釣りはゴルフやスキーと同様ブームの時期がありまして、私が小学生の子供の頃(1970年代)に一時大流行しました。
私はその頃に初めて釣りを覚えたのですね。
つい10年ほどの2005年ぐらいから、バスフィッシングで小学生から大人まで盛んになったのが第二次ブームで、皆さんのご記憶にあるのではないでしょうか。
不況になり始めると釣りが流行ると言われています。
私が釣りをやりはじめたのが、第二次ブームが押し寄せる少し前の1992年でした。
本格的ではないけども取りあえず釣り道具を一揃い揃えようと、実家近くの釣具屋へと行きました。
実家の周辺は釣り具問屋の町です。
こんな物でいいかと、どこの国の製造かもわからない3000円の竿と1200円のリール、針と糸とウキ、オモリを買って完了。
全部で1万円もしないです。f(^ー^;
これらを携えて次の休日に一人で大阪湾の護岸へ向かいました。
途中のエサ屋で500円程度のゴカイを買って堤防から糸を垂らします。
どこの護岸へ行ったのか覚えてない。
撒き餌も何も無しに釣り糸を垂れても魚は釣れてくれません。
それぐらいは知っています。
一番簡単なのがテトラの穴釣り。
テトラポッドの隙間に糸を垂らして潜んでいる根魚を釣り上げます。
食べられないような小さなガシラ(カサゴ)、メバル、アイナメなどが時々餌に食いついてきます。
けっこう面白いもんです。
大の大人が喜々として釣りに夢中。
穴釣りは根掛かりが多いです。
引っかかった針を外すために、何度か竿をしゃくります。
しゃくっても取れないときは糸を持って強引に引きちぎります。
何度目かの根掛かりの時に、一度、二度と竿をしゃくると、
パーンッ!!!
と言う大きな音と共に体がのけぞってしまいました。
な、何が起きたんだ!?
事態が飲み込めなくて訳がわかりません。
左右をキョロキョロと見回しても何も変わった様子はありません。
変だな~と思いながら、自分が持っている
竿を見ると真ん中からポッキリと二つに!∑(´□`;)
これが竿を折るという生まれて初めての体験。
カーボン製の竿が折れるときって本当に大きな音がします。
条件によっては堤防の遠くの方まで聞こえるほどです。
ごくたまに釣り場で、この破裂音が堤防に響き渡ると、「あ~!また誰か竿を折ったな。」と思わずクスッて笑ってしまいます。
隣の見知らぬ釣り人を見ると、その人もニヤニヤ笑って破裂音の方を振り向いているもんです。
( ^▽^)
折れた竿を呆然と見つめます。
もう釣りは出来ません。
どうにもなりません。
(|||ノ`□´)ノオオオォォォー!!
せっかく楽しかったのに、
せっかく楽しかったのに、せっかく楽しかったのに・・・
未練タラタラですが残りの餌を全部捨てて、折れた竿を海へぶん投げて
(当時、海をきれいになんて言うマナーがまだ身についていなかった←反省)自宅へ帰りました。
家に帰ってから今日のことを振り返ります。
『どこの国の物かもわからない安物竿なんて買うからこうなったんだ。 やはり国産に限る。』
次の週末、お金を持ってまたもや釣具店へ。
一番最初に買った本格的な磯竿、「CYBER RANGE磯 1.5号4.5m」。 シマノ94年カタログより。
親戚に貸したまま行方不明。
これが釣り沼への第一歩になろうとは、その時は夢にも思いませんでした。
「今度いっしょに釣りに行きませんか?」
当時勤めていた会社の同僚からのお誘いでした。
釣りを趣味にし始めたとは言え、貧乏サラリーマン。
子供が出来て何かとお金がかかる。
そんなに足繁く通えません。
交通費を節約するために一人より二人、二人より三人と、釣り人はパートナーを求めます。
周囲に釣りをする人間がいなかった私と彼は、すぐに釣り談義で意気投合しました。
私が車を出す。
代わりに彼が本格的に釣りを教えてくれる。
交通費は折半。
行き先は彼の実家が三宮だったので、ホームグラウンドの神戸港。
造船所などのある工業地帯の一番沖の護岸の和田岬。
船の向こうに見える長いテトラ帯が和田岬の防波堤。
釣りの対象魚種は「
チヌ」(黒鯛)。
海釣りの対象魚種の中で一番人気なのがこのチヌ。
東北から沖縄までほぼ全地域に生息し、汚れた海にも平気で、浅い沿岸に住み着いているので、堤防から釣ることが出来ます。
針にかかってからの引き味と、いぶし銀に輝く魚体の格好良さ、近場の堤防で釣れて、食べても良しということで、この魚をターゲットにしている愛好家はかなり多いです。
しかし、この魚は臆病者で非常に気難しい。
釣り方のコツをつかむまでなかなか釣れてくれません。
ビギナーズラックで1匹釣ったことのある人が、本格的に狙い始めて何年も経つのに、ぜんぜん釣れないと嘆く釣り人もいるぐらいです。
私もコンスタントに釣れるようになるコツを覚えるまで数年かかりました。
で、彼に手取り足取り釣り方を教わって、その日ビギナーズラックでチヌを2匹釣り上げたのでした。
もう、それからが彼と釣り三昧。(゚∀゚)
休日は朝から待ち合わせていつもの護岸へ。
ある時は埠頭で一晩中夜釣り、ある時は和歌山県まで行って地磯から磯釣り。
二人ともお金が無いので船なんか使いません。
立ち入り禁止のフェンスもなんのその。
10mの高さのある堤防に登り、足場の悪い隙間の大きい大型テトラを下りていく。
そんなのは日常茶飯事。
和歌山県白浜の観光地、断崖絶壁で有名な三段壁の延長上にある崖っぷちの岩場を二人で下りて、終日釣りをするなんていう荒技もやりました。
台風接近時の三段壁近くの岩場、 下のテラスに下りられるルートがある。
こうして私は釣りの沼にどっぷりとはまってしまったのです。
釣りの沼にはまると様々な症状が現れます。
もう、釣りに行きたくて行きたくて仕方がない。
「釣りバカ日誌」の浜ちゃん状態。
ほぼ病気!(・ω・;)
釣り病とは
釣り病は精神疾患の一種ですが、他者への感染力が極めて強い深刻な病です。
最悪なケースは家庭崩壊、一家離散にまでつながります。
人間の狩猟本能に起因する病ですので治療方法は無いと断言してもいい病気です。
発病する人は既婚者に多く、生活が安定し始め、年を取って体力が衰えてきて激しいスポーツが出来ない年齢に達してから発症するケースが多いようです。
また、単独でのプレイが容易なリクレーションのため病状の進行に周囲が気付かず、重症に陥りやすいのも特徴です。
釣りのスタイル、海釣り、船釣り、川釣りや、狙う魚種によって症状の出方に違いがあるのですが、代表的な症状を挙げると。
1.潜伏期
釣り道具を一揃い揃えて満足している期間。
春から秋にかけての良いシーズンに2-3ヶ月に一度ぐらいの釣行。
たまに行うお遊びだと自分を納得させて、釣りに行ける日がやってくるのを楽しみにしている状態。
釣り場に子供を連れて行ったりバーベキューなどで家族サービスにも余念が無く、まだ平和な日々を過ごせます。
通常はこのまま病気が悪化しないケースが殆どです。
2.やや軽微
ビギナーズラックで、大漁に巡り会ったり、たまたま良型の魚が釣れたりすると、いきなり病気が発症します。
また、周囲に重度の釣り病を持っている人がいると、大きな影響受け潜伏期間が短くなり病状も重くなっていきます。
「いや~!釣りに誘われちゃってさあ。」
とか言いながら、釣行回数が次第に増えるようになります。
この時点ではまだ道具が増えることはありません。
経済的理由や、職業上、家庭の理由で、治癒される方も多くいらっしゃいます。
完治ではなく、いつ再発するかわからない、寛解という状態です。
3.軽微
第三週は釣りの日。とか勝手に決めて月に1度必ず釣りに行くようになります。
ビギナーズラックの幸運が無くなり、思うように魚が釣れなくなります。
魚が釣れない焦りからか、「これは道具が悪いからかもしれない。」と新しい竿などを欲しがるようになってきます。
まだ専門に狙う魚種が確定しておらず、何をどうすればいいかわからない状態。
4.軽症
テレビで毎週やっている釣り番組などを欠かさず見るようになってきます。
家族サービスで帰宅が遅くなり、番組を見逃すと非常に機嫌が悪くなります。
釣り番組をビデオに録画したり、特殊な釣り番組を見たいがためにケーブルテレビを導入し始めるのもこの時期。
本棚に釣り場マップなどの分厚い本が並び始めます。
月に二、三度釣りに行くようになります。
天候などの理由で釣りに行かない日には意味もなく釣具店に行くようになり、たくさん持っているにもかかわらず、釣り針を一つだけ買って帰ってくるようになります。
ボーナス時期にいつの間にか買った、新しい竿やリールなどが物入れに隠されています。
5.中程度
毎週のように釣りに行くようになり、ご本人の釣りスタイルが確立する時期です。
海釣りならば季節や天候などお構いなしに外出するようになります。
渓流や鮎釣りは禁漁期間があるので、解禁日が迫ってくると遠い目をするようになります。
この頃には自宅の傘立てには5-6本の竿が立っていて、釣り道具部屋(又はエリア)を欲しがります。
「あのウキがどこにも見あたらないんだ。」と訳のわからないことを口にして、血走った目で釣具店をハシゴするようになります。
釣った魚をお土産に持って帰ってくるので、それを食べた子供達が、「やっぱり魚は鮮度だね!回転寿司なんか魚臭くて。」と病原体が周囲に感染し始めます。
6.やや重症
頭の中は釣りのことでいっぱい。
釣りクラブに加入して、友人は全て釣り仲間という状態。
仕事にも身が入らなくなり、出世コースから外れていきます。
細長い真っ直ぐな物は竿に見えてきます。
駅のホームでビニール傘をゴルフクラブに見立てて素振りをするように、傘を片手で持ち静かに水平に構えたかと思うと不意に「フィッ~シュッ!!」と呟いて傘を上に振り上げます。
「アワセは大事だから日頃のイメージトレーニングなのさ。」と得意そうに回りに言います。
この頃には使い切れないんじゃないか?と思うほどの釣り具が家に溜まってきます。
海や山で遭難する人などはこの段階。
7.重症
金銭感覚が完全に喪失し、1つ10万円もするような竿やリール、数万円もする稀少なルアーなどをいくつも所有しています。
「釣り道具は資産なんだ!ー ̄)ニヤリッ」と売れば金になるという感覚を持ち始めます。
この段階で釣り竿は20本以上とそれに付随する釣り道具を所有し、家計は完全にひびが入っています。
マイカーを釣り専用車に仕立て上げ、磯臭い車内には必ず釣り道具が一揃い入っています。
家族に文句を言われるのでたまに家族サービスで外出しても、行き先は海や河川などの水辺ばかり。
家族写真を撮らず水辺ばかり撮影します。
家族旅行をすると翌日の夜明けから朝食までの数時間行方不明になったりします。
たいていの釣り病にかかった人は、症状の進行はここまで。
この時点で、周囲への影響の大きさに気付き、治療を開始し病状を安定させる努力をし始めます。
8.かなり重症
「俺、漁師の家に生まれてきたかったなあ。」と真顔で言います。
家族からはすっかり相手にされなくなり、家庭は分裂状態。
お財布は火の車なので、釣りや釣り具でお金儲けが出来ないかと考え始め、オークションで釣り具の転売に失敗するようになります。
お金持ちや資産家はこの段階で船(漁船)を購入したり、海辺の別荘の購入を開始します。
お盆正月GWは遠征に出かけ帰って来ません。
9.末期
釣りバカ日誌の世界がそのまんまになりますが、あれは漫画の中の世界なので円満に収まっています。
現実は・・・
一般家庭では夫婦は離別、家庭は崩壊のケースが殆どになります。
本業の仕事より釣りの方で有名人となります。
釣行年間日数200日を越えるような強者も出現し、特定の釣り場では顔を知らぬ者はいない「主」と呼ばれる存在になっています。
食っていけないため家庭を捨てて職漁師に転身する人もいます。
才能のある者は、釣りメーカーお抱えのインストラクターになったり、雑誌にコラムを書いたり、釣具店や釣り餌店を運営したりします。
東洋大名誉教授のさかなくんが羨ましくて仕方が無くなります。
私は7の段階で止まっています、いや、止めています。(^◇^;)
この釣り病は亜種として、コレクター症候、大物症候、ヘラブナ症候、渓流症候、ルアー症候などの様々なケースの病状が確認されています。
あなたはどれ?