スキー道具2
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山では冠雪の便りが聞かれるようになりました。
ここ近年の温暖化で積雪が少なくなり、景気も長い間冷え込んでしまって、スポーツに一番お金を落としてくれる若い人達のお財布事情が苦しくなってスキー人口が極端に減ってしまいました。
バブル時代まで全盛を誇っていたスキー場が幾つも閉鎖してしまっていて寂しいものです。
地方に人がいなくなってご老人ばかりになってしまったので、例え運営していても就労者の確保が出来ないことでしょう。

オフシーズンの琵琶湖バレエスキー場。 夏場は避暑と観光スポットとして運営されています。
関西のスキー場も生き残りに必死です。
私が学生時代にスキー場でアルバイトしていた時のメインの働き手は、20代から30代ぐらいの社会人の方々でした。
主要な部署には地元の方がおられましたが、地元の方は家で行う民宿やペンションの経営に忙しく、スキー場運営の現場ではあまりおられなかったです。
スキー場で一冬住み込んで季節労働のアルバイトとして働いていた社会人は、その殆どが山や雪に魅せられて都会での生活を捨ててしまった人達。
夏は山小屋でポッカや宿泊所のお手伝い。
冬は山小屋がクローズになるのでスキー場で暮らしています。
終身雇用で就労者の90%以上がどこかの会社に所属していたのが当たり前の時代に、季節労働者としてこの雪山にいる人達は、言わばはみ出し者。
中には40代50代の方もおられましたが、そんな方の多くは破産者や前科持ちで町に住めなくなった人達でした。
ある時、寮のおばさんが、
「あの人怒らすんじゃないよ。怖いからね。」
と私たち学生グループにそっと小声で教えてくれる場面もありました。
でも、そんな40代や50代の人生の辛酸を舐めてきたおじさん達は、私たち学生が可愛く見えたのでしょうね。
いつも優しく、いろんな事を教えてくれ、語ってくれました。
そんな社会人の方々の一人に鴫秋子さんがおられて、当時は山のことを何も知らなかったのですが、後日プロフィールを聞いて驚かされました。
*鴫秋子さん:著名な女性クライマー。 女性初の冬期マッターホルン北壁登攀者。 著書:ザイルの二人―満則・秋子の青春登攀記
(山渓ノンフィクション・ブックス)
今となってはいい思い出です。
さて、今回は当時私が使っていた道具の一部が物入れにあるのを見つけたので、少しばかり紹介します。
同年代の方の中には、『懐かしいなあ~!』と思われる道具があると思います。
ビンディング
愛用していた締め金具はマーカー。
マーカーは西ドイツのメーカーで現在でもビンディングを作っていますね。
スキー板テニスラケットのVOLKLと合併していたのは驚いた。
この製品はYAMAHAが輸入総代理店で販売していた時の物。
リア金具が特徴的でバネがむき出し。
安全性にたいへん優れた機構で軽量。
一時はレンタルスキーの殆どにこの金具が付けられていました。
外れる時は二つに分解します。
壊れたように見えるので、初心者や知識のない人が途方に暮れているのをよく見かけました。
元に戻す時は力がいります。
欠点はステップインじゃないこと。
板の上に乗ってからリア金具を手で持ち上げないといけないので、だんだん利用者が少なくなり製造終了してしまいました。
写真の金具はFDRと言う金具で、もう一つ別の形状をしたMRRという製品もありました。
私の体重と技量に合わせて決めたバネ数値は10以上。
この写真は最後に使用した時の状態のままで10を指していますが、一番きつく締めた競技に参加する時は12まで上げたことがあります。
バネの数値は、初・中級者で5とか6ぐらいでしょうか?
このビンディング、上級・レース専用で製造されたので、5からしか目盛りがありません。(;´Д`)ノ
内部のバネも、初・中級用とは違うバネが用いられています。
なぜこんなにきつく締めていたのか?
上手になってスピードが上がって来ると板や締め具にかかる負荷が大きくなってきます。
緩いとささいな障害で滑走中に簡単に外れるから、自然とそうなっちゃうんです。
それともう一つ。
深雪帯へ行くようになりました。
深雪帯で外れたら、深く潜った板を見つけられずにいたら、徒歩で下山しなきゃいけない。
下手をすると遭難しかねない。
深雪で板が外れるぐらいなら、捻挫した方がマシだという考えからです。
ですから、捻挫するとか骨折するとかギリギリのところで外れてくれるような調整をしていました。
この解放値調整は圧雪などで出来た固い雪の山に、スキーを履いたままわざと板をぶつけて、どれぐらいで外れるか実験しながら決めます。
で、ドライバー1本持って実際に雪上を滑ってみて、外れたら締めていくという細かい調整を続けていきます。
下手すると足首や膝を捻挫するので決してお勧め出来ねえ。( ^▽^)<わっはっはw
実際にゲレンデの固く締まったアイスバーン上で変な転倒の仕方をして外れたことはあっても、深雪は固まりきっていないフカフカの状態なので、少し重い雪でさえも転倒したり引っかかっても外れることはありませんでした。
下の写真はマーカーの昔の製品。
スキー場バイト時代に、「もう使わないから持って帰っていいよ。」と、先輩のおじさんからいただいた物。
これらのビンディングは錆びも無いし、調整すれば今でも使えると思います。
取付用のゲージとかトゥプレートが無いので、何か代用品が要りますが。
昔の金具はプラスティックをあまり使っていなくて永久保証だったんですよね。
本当に壊れなかった。
これは革靴時代の物。 今でも使えるのかな?
道具はあとストックがあればスキーセットの完成。
ストックは国産メーカーの「
ホープ」。
日の丸が入ったストックで、覚えておられる叔父さん叔母さんもおられるかと思います。
アルミ製で軽く非常にバランスの良いシャフト。
使いやすかったですね。
ホープ社は1980年に会社をやめてしまったので入手難になって、スキー店を探し回った思い出があります。
左右1セット1万円もする高価なストックでした。(定価は1万5千円ぐらいだったはず)
ウエア
スキーを始めた最初はやっぱりスキー専用の上下を買いましたよ。
最初はね。f(^ー^;
スキー場にバイトに行った時に、作業服として防寒防雪の上下を貸与してくれます。
仕事しながら休憩時間に滑る時はこれでゲレンデに出ていました。
スキー場でバイトしているなんてのは、学生でなければフリーターの山男山女達。
当時、フリーターって言えば落ちこぼれで、都会なら山谷か西成に住んでる連中と何ら変わりがない。
山で仕事しているなんて、町にいるのが嫌だからいるだけで、年中貧乏・金欠。
そのくせ山道具だけは一流品という変わり者ばかりでした。
そう言う山男達がスキーで着ている服って、作業服でなければ山ウェア。
中には、山ウェアを破損させるのが嫌だからって、分厚いセーター着てウインドブレーカーで滑っている強者もいました。(^◇^;)
首元にタオル巻いてね。
下半身はジーパンにウインドブレーカー下とスパッツ。
手袋?
スキー用の革手袋じゃないっすよ。
毛糸のクライミング用。
当時実際に身につけていた手袋。
毎日酷使しているとスキー用の革手袋は縫い目から破れてきちゃう。
お金が無いものだからみんな新品なんか買えない。
軍手を2枚重ねて滑っていた先輩もいたな。
毛糸の手袋は雪中で使うと表面に氷が付着して膜のようになるんです。
逆に通気が妨げられて暖かいんですよ。
但し、春になって暖かくなってくるとこれが逆効果。
付着した氷が溶けて中にまで浸透。
指先の感覚が無くなるほど冷たい思いします。
スキー道具買うのと交通費で精一杯の私は、先輩方の服装をすぐに真似しました。
あまり転倒しなくなってきたからこんなので十分なんです。
初・中級者がこんな格好でスキーしたら、あっと言う間に襟首や裾から雪が入ってずぶ濡れになっちゃいます。
ちょっと話が逸れますが、上級者は転倒しないんじゃないんですよね。
滑走スピードが違いますし斜面も急峻な場所を好みます。
バランスを失って転倒することは多々あります。
ところが、リカバリーがうまい。
尻餅付いたり、手をついたりしても、筋力と養ったバランスでさっと立ち上がって元の体勢に戻ります。
一旦こけて完全に体勢を崩しても、スピードとスキー板の反発力、ブーツのシェルの固さを利用して、さっと立ち上がって止まる。
端から見てると、まるで転んでいないかのような一連の動きでリカバリーしているのです。
斜面を頭からずるずると落ちたり、雪に埋もれてジタバタしないから、服の裾とかに雪があまり入ってこない。→濡れない。んです。
バイトのショップで着ていたエプロン。
YAMAHAがスキー場のオフィシャルスポンサーでした。
山から下りてきたら、誰も作業服なんて貸与してくれません。
作業服を黙って持って帰って来ても、他のスキー場でそれを着るわけにはいきません。
かと言って、ウインドブレーカーとスパッツじゃ、厳寒期はやはり寒い。
スキーウェアは専用を上下で揃えるから高い。
ブランド物なんか上下で10万円ぐらいしますから。
そこで私が考えついたのが釣りウェア。
ちょうど良いことに住んでいた実家の周囲には釣具店がわんさかあります。
防寒、防水はスキー服以上の性能で、安い物だと上下6000円も出せば買えます。
3万円も出せばゴアテックスが手に入れられました。(゚∀゚)
デメリットはおしゃれじゃないこと。
なんであんなに落ちぶれた色なんでしょうか。
白に黄色にピンクにブルーに、華やかなスキーウェアが一杯のゲレンデで、濃紺とか濃グレーの上下はある意味メチャ目立ちます。( ̄▽ ̄;)
近年の釣りウェアはおしゃれなのでゲレンデでも違和感はないかと。
それと、足にインナースパッツが無いこと。
足下を登山用のスパッツか何かでガードしておかないとブーツに雪が入ってしまいます。
引退までの数年間。
私のスキーウェアは釣りウェアでした。