ペルチェデバイスで熱中症対策(前編)
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近年の夏の高気温。
仕事でもアウトドアでも夏場は暑さと熱中症との戦いになってきました。
数年前まではまだ空調服で何とかしのげたのですが、気温が35度以上の体温に近い状況になると空調服では対応しきれなくなってきました。
気温というのは「風通しの良い日陰」という状態の百葉箱の中で計測した温度。
直射日光の降り注ぐ炎天下では体感温度はこの気温に更に+5度+10度という状態になります。
毎年、一度は軽い熱中症にかかってきましたが、シニアと呼ばれる年齢に入って暑さに対して徐々弱ってきているのは実感していました。
2024年頃からネットで発売され始めたのがペルチェ素子を使用した冷却ベスト。
モノは試しにと安価な製品をネットで購入して試用してみました。
背中の部分に大きなペルチェ冷却板と冷却ファンが2つ備わった製品。
モバイルバッテリーで作動して、宣伝文句は環境温度から-22度冷却ということ。
内側はこういう形状。
作動させてみると確かにペルチェ冷却板はしっかりと冷えて結露まで生じます。
実際に着用してみます。
あまり冷たさ感じない。(;´д`)ノ
衣服の上からとかいう問題ではなく、ペルチェ冷却板と背中(又は衣類)との間に隙間があると冷たさを感じないのです。
肩甲骨の部分は背骨両サイドに凹み状になっているため密着しにくい。
ぴったり密着させるためにベストのベルトをぐっと縛って無理やりくっつける必要があります。
さっそく炎天下の草刈り現場で着用してみました。
結果は、ほぼ効果が得られない。
背中に密着しにくいので機械は冷えているのに冷感が感じられません。
逆にベストを1枚来ていることでますます暑さが増すことに。
しかも、草刈り機のハーネスの装着順をミスったことで空調服の効果も得られず、この日は軽い熱中症に陥ってしまいました。
せっかく購入したのに廃棄するのはもったいない。
何とか上手に活用する手段はないか?
一計を案じた私は、冷感をしっかりと得られる位置になるまでベストのベルトを調整して冷却板が最適な場所に来るようにしました。
冷却板が肩の位置に来るようになりました。
無理にベルトを締め付けているので長時間着用しているときつくなってきます。
確かに冷えていることは冷えているのですが・・・。
ほぼ使い物にならんわ!(;´д`)ノ
これが正直な感想でした。
この製品の使用状況は昨年下記のページでまとめていますのでよろしければご一読ください。
ペルチェ冷却ベスト(前編)
ペルチェ冷却ベスト(後編)
ここでペルチェ素子についておさらい。
ペルチェ素子は電気を流すことで素子の半面で冷却し、半面で加熱するという性質を持つ半導体の一種。
パソコンのCPU冷却、小型冷蔵庫の冷却システム、タブレットなどの冷却クーラなどに用いられています。
この素子を冷却服用のアイテムとして製品化されだしたのが2023年頃くらいでしょうか?
昨年から今年にかけて冷却服用アイテムとして多くの製品が出てきました。
ペルチェシステムの冷却服には幾つかの欠点があります。
1.外気温に影響されやすく排熱管理が難しい。
確かに冷却側の面は周囲温度より冷えますが、周囲の温度が高すぎると冷却する能力に限界がきて十分には効果が得られると感じません。
仮に環境温度-20度と謳っている製品があるとすれば、冷却とは反対側の放熱面は単純に考えて+20度の熱を発生することになります。
気温30度で冷却面を10度まで下げようとすれば、反対側は30度+20度で50度の熱を持つことになります。
この熱をきちんと排熱して熱交換を促進出来れば問題はないのです。
ペルチェデバイスの排熱面には冷却ファンなどを装備していますが、排熱のための装置が大きくなりがちで着用する服となると問題が生じてきます。
冷却板の当たる部位は冷たいのに、周辺の排熱の熱気をうまく逃すことが出来ないと逆に暑いともなりがちで、ペルチェデバイスを冷却服として活用するには空調服などを利用して排熱を促進させる必要が生じることとなります。
2.冷えているのは冷却板が当たっている場所だけ
ペルチェ冷却服で冷却効果があるのは、冷却板が当たる場所だけです。
冷風を送り出すような装置もありません。
ペルチェデバイス単体で体表面の広範囲を冷やすことは出来ません。
冷却板付近の周辺温度まで下げようとしても、環境温度が高ければ能力が追いつかないのが現状です。
冷却板が当たっている体の一部しか冷たくならず、また冷却板が当たっている部分の感覚が次第に冷たさに慣れてくるので、ペルチェ服を着用していて涼しいとかの印象も得られにくいのです。
3.電気バカ食い
ペルチェは熱効率が良くない素材。
ペルチェの冷却能力は流す電流と電圧によって性能に大きく差が出ます。
冷却板を大きくするとその分使用する電気も大きく消費され、排熱量もまた大きくなります。
ペルチェデバイスの数や種類によってはモバイルバッテリーが数時間しか持たず、幾つも用意しなきゃいけないということになってしまいがちです。
モノによりますが10000mhのバッテリーで2-3時間ぐらいしか持たない。
現在販売されているペルチェ冷却服。
評判がかなり悪いです。 短時間ならば
水冷服の方が格段に冷却効果が得られます。
殆どのペルチェ冷却服が冷感が得られず使い物にならないという評価。
この理由は、
販売側が誇大な誇張をしている。使用側が性質を理解していない。からじゃないかと思われます。
販売者側が「瞬間冷却」だとか、「快適な夏」とか買い手が誤解を招くような売り方をしている。
それを信じた買い手が着用している上半身が冷えるものだと思って使うから使い物にならないと感じます。
上に書いたペルチェ冷却のデメリットにあるように、体のピンポイントしか効きません。
放熱を何とかしないと逆に暑さが増します。
特にアマゾンの中華製品などはひどいもんだ。
いい加減すぎて、誇大広告じゃないかと・・・。(-。-;)
ここで話は変わりますが、今年(2025年)の7月初旬に仕事中ひどい熱中症にかかってしまいました。
熱中症の症状は個人差がありますが私の場合、
体温の上昇(37.4度がずっと続く)、頭痛、めまい、全身のだるさ、悪寒。
腎臓機能がいかれたのか初期の小便は真っ赤。
熱中症には効果的な治療薬が無い!
うんうんうなって2日間寝込みました。
他に例えるならきつい二日酔い状態に加えて激しい悪寒に見舞われるという症状。
入院しなかっただけマシでこれで熱中症の程度2と言うから怖いもんです。(程度3は命に関わる)
それに加えて怖いのは再発。
今年は私の体調がよっぽど良くないのでしょう。
ちょっとしたことで再発してしまいます。
ちょっと暑い場所にいてるとすぐに体温が上昇してなかなか下がらない。
全身がだるくなって行動が鈍ってくる。
頭痛に襲われる。
ひどいとまた寝込む。
再発はちょっとしたことで何度でも襲ってきます。
3週間経過しましたが未だに体調不良が続いています。(×_×;)
すっかり体温調整の回路が壊れてしまったような感じ。
それでも現場作業をしなくてはいけないので、取った対策は「
とにかく体が熱くならないよう冷やし続ける」ことでした。
熱中症の予防は、水分や塩分の多めの補給。
そして、
『首の両側、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷やす』 のが効果がある。
アウトドアとかなら、「体温を調節する中枢はうなじにあるため、ここを直射日光にさらさないように気を付ける。」というのもある。
足の付け根や脇の下に何かを付けるのは作業に支障が出る
そこで、知り合いから保冷剤を入れて首に巻くネックバンドをいただいて、それをずっと使っていました。
冷やすと冷やさないでは雲泥の差。
体の疲労感に極端に差が出ます。
欠点は約1時間ほどで保冷剤が溶けてしまって交換しなければいけなくなる。
結露で首周りがびしょびしょに濡れてしまうということ。
1時間毎に休憩を兼ねて保冷剤の交換をしていました。
他にリング状の物など首周りを冷やすアイテムが販売されています。
これらは体をクールダウンさせますが、体全体を冷やすものではなくどちらかと言うと熱中症予防のために作られたもの。
こういうの

とか

こういう物。
どちらも持続時間が短いのが欠点。
ペルチェ素子を使ったネッククーラーも販売されていて使ってみました。
内蔵充電池で動きます。
電気量販店で1台購入してみました。
休日の外出時などに使用しましたがよく冷えます。
使っていると冷たさに慣れてきて冷感がわからなくなってきますが、実際には首筋にある血管を冷やし続けてくれているので、体は随分とマシな状態でした。
ただ、残念ながら
・ペルチェの面積が小さくて大きい効果は得られにくい。
・排熱口が内向きで冷却プレート直ぐ横で熱気が出ている。
・首周りでずっとキーンというファンの動作音がしているので少し気になる。(周囲の人にはあまり聞こえません)
・使用時間が1時間ほどしか持たない。(モバイルバッテリー併用で長時間使えますが) と言うデメリットが有りました。

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猛暑対策、熱中症対策用品は、保冷剤を使った安価で簡易なネックリングなど。
充電池内臓の送風ファンやネッククーラなど様々なものが販売されています。
猛暑の屋外で作業する場合や、万博などで行列に並ぶ時など、
熱中症予防として首筋を冷やすのはかなり有効。
全く何も無いよりは絶対に使った方が良いです。
熱中症にかかった体験から言うと、進んでこれらのアイテムを使うことを激しくお勧めいたします。
上に挙げた製品群。
少しばかりいまいち。
炎天下や蒸し風呂のような現場作業で使用するには能力が全然足りない。
冷却の時間が長くて大きな効果が得られる仕組みはないか。
水や氷、風での冷却には限界があるので、やはり機械的なペルチェデバイスの使用が一番ではないか。
そう考えて、現在販売されているものを利用して
首筋を冷やすものを作ってみることにしました。
次回はその制作と実際に使ってみた感想。
後編に続く